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2008年04月26日

アクセルと香辛料

 乱雑なようでいて美しく立ち並ぶ町並みを、夕日が紅く染める。

 進入を拒むように細かく入り組んだ入り江が、
 立ちはだかるように向かってくる逆風が、
 まるで我らがアドリア海の女王を守るようだ。

 東南アジアから約130日間、
 ジブラルタル海峡を抜けてからはほぼ毎日のように夢に見た。
 その夢と寸分違わぬその景色に、また夢を見ているのかという錯覚すら起きる。

 ここはヴェニス。水の都。
 そして我が、故郷。

 今、アドリア海の母の腕の中へ、ゆっくりと進んでいく。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「よお、アクセル。久しぶりじゃないか。
 随分とご無沙汰だったから、てっきり異国の海で沈んちまったのかと思ったぜw」

 交易所の親父さんは、相変わらずでっぷりとした腹を揺らしながら、
 相変わらずキツい挨拶だ(汗

「なに、港に立ち寄るたびに女が放してくれないんっすよw
 オラだっていつもやられてるわけにはいかない。
 少しは気の効いたセリフくらい吐いてみたくもなる。

 と、親父さんはオラのセリフを聞いて、目を点にしている。
 なんだ?なにかそんなに変だったか?
 と、

「ブ」
 ワハハハハ、と普通にしてても揺れてる腹を更に揺らしながら悶絶している。
に、似合わねぇ、、、何だそれ、、、苦しい、、、ギャハハ。。。」

 笑い過ぎだ(哀
 軽いため息と共に、言うんじゃなかった、と後悔。
 ワサワサと頭を掻きながら、
 軽く眉をしかめながら、
 さっさと本題に入ることにした。



「ところでっ。
 今日は買い取ってもらいたいものがあるんすよっ。」

 そう強引に切り出すと、
 さっきまで涙を浮かべてまで笑い転げていた親父さんの目が、
 即座に商人のそれになる。
 全く食えない親父さんだ。

「ほう?見せてみろ。」
 オラはレーフォロに指示して、交易品の樽を並べさせた。

「ナツメグ、メース、クローブの3種の香辛料っす。
 まあ、先ずはこの香りを嗅いで欲しいっす。
 東南アジアから約4ヶ月ちょっと。
 潮気に当てられても、
 日にちが経っても変わらず高い香りを放つ一級品っすよ。
 これらの香りををこの街の貴族どもに嗅がせたら、
 目の色変えて飛びつくこと疑いなし。
 どっすか?いくらで買ってくれるっすか?」



 親父さんの目の光が更に光ったかと思うと、
 直ぐにあからさまに残念そうな顔をした。

「ああ、アクセル、お前なんてタイミング悪いんだ。。。
 今、丁度香辛料はダブってるんだ。
 お前みたいな航海者が軒並み香辛料を持ってくるもんだから、
 相場も下がり気味でな。
 そうだな、こんな感じでどうだ?」

 親父さんが示した額は、オラの想像よりちょっと少ない。
 もっとも、現地で仕入れた価格より桁は2つほど多いのだが。

 オラはその提示額を見て、
 表情を消して考え込むフリをしながら、
 さりげなくこの街の相場表をチラリと見た。
 そして、確信した。
 この額は安すぎる、と。


「親父さん。。。」
 口に手を当て深刻そうな表情を作りながら、
 さりげなく、口元を隠してみる。

「ん、何だどうした?」

「いやね、オラはここに寄る前にザダールに寄ったんすよ。」
 親父さんの顔が、かすかに動いた。
 気がした。

「そしたら、鶏の相場がやけに高かったんすよねぇ。」
 親父さんの顔が、一瞬だったが、
 間違いなく確かに歪んだ。

「そ、それはホレ、
 いつもの鶏羽オンラインで稼いでる奴らが買い漁ったんじゃないのかね?(汗」

「うん、そこなんすよ。
 いやね、オラも前から気になってたんすよね。
 鶏の羽は確かに商売としてはウマイ。
 けどさ。
 羽を毟った後の鶏肉って、何処に行くのかな、ってさ?」

 親父さんの顔が、完全にヒクついてるw
 手のひらで隠したオラの口元は、
 してやったり、とばかりに笑みに歪む。

「そ、そりゃお前、やっぱそこら辺で捨てられてるんj」

「ところが、ザダールの交易所の親父さんに聞いてみたら、
 なんでも余った肉はヴェニスに送ってるらしいんすよ。格安で。
 しかも、この街の鶏肉も結構売れてるみたいっすねぇ?」

 しばし沈黙。
「さっきこの街の酒場で耳にしたけど、
 貴族どものパーティが偶然あちこちで続いてるそうじゃないっすか?
 伯爵の祝賀会とか?
 娘さんの誕生祝とか?
 後一週間はこんな感じで貴族のパーティが続くそうじゃないすか?」

 親父さんの顔はみるみる渋くなる。
「パーティには肉類は付き物。肉類には香辛料が付き物。
 ま、肉類は内陸地やザダールから流れてくる鶏肉で比較的間に合うだろうけど、
 香辛料はどうだろうねぇ?
 香辛料は長い長い航海を経て得られる代物っすよね?
 今は間に合ってても、そうだねぇ、後3日もすれば香辛料品切れになるんじゃないすか?
 オラはいいんすよ、他所の街でこの香辛料売っても?
 でも、こんな遠くの街まで香辛料運んでくる物好き、
 そんなにいるかなぁ?
 オラが最後かもなぁ。。。?」

 ついに観念したらしいw
 親父さんがでっかいため息と一緒に声を絞り出した。
「わかったよ、アクセル。この値段でどうだ?」
 親父さんがもう一度金額を提示してきた。
 上々だw

 だが、そんな素直なセリフは親父さんには言わない。
 表情を消して考え込む、
 フリをするw
「んー。。。」

 親父さんは天を仰いだ。
「か、勘弁してくれよアクセル。。。
 、、、はー。分ったよ。これでどうだっ、泥棒めっ。」
 思いの他、高い値を付けてくれたw

 内心では会心の笑みを浮かべながら、
 表情には妥協の色を見せ付ける。
「ふう、仕方ないな。これで手を打つとするっすよ。」

「何が手を打つだコノヤロウ。。。
 あ、分かった、分かりました、これでお願いしますよ、ダンナ(哀
 全く、、、しばらく見ないうちに随分香辛料の香りの効いた商人になりやがって。。。」

 毎度ありw、とようやく隠していた口元から手を放す。
「やだなぁ、オラはあくまで冒険家っすよ?
 ただ、冒険という肉だけじゃ物足りないっすからね。
 少しはスパイスを効かさなきゃw
 もっとも、、、」

 精算を終えた頃、
 いつもの顔ぶれを思い浮かべながら更に続ける。
「オラの友人知人は会話するたびに、
 それはそれは結構な量の香辛料をオラに振りかけてくれるんでねぇ。。。」

 大航海時代という肉の塊に、
 よってたかってそのキャラ特有の香辛料を振りかけられて。
 真っ赤っかになった料理を目前に、
 さあ食えw、と嬉しそーにせがまれて。
 そして、目が点になってるオラ。

 香辛料、効きすぎのような。。。

「どうも、オラにとっての香辛料は間に合ってるみたい。
 今度からは控えめにするっすよ(汗」

 親父さんは、
 そうしてくれ、とも、
 お気の毒様、ともとれるような苦笑いを浮かべて、
 オラに手を振る。






 出航準備しながら、もう一度みんなの顔を思い浮かべる。
 やっぱり、香辛料の効いた微笑が、オラに向けられてる。

 少しは潤いを下さい(哀
 とも思うけど。

 その一方で、
 それはそれで捨てがたいなw
 とも思ってしまう。
 少なくとも、退屈はしないで済みそうだ。

 やれやれと自分自身に苦笑いするしかない、
 アクセルなのでした。
posted by アクセル at 02:23| Comment(2) | TrackBack(0) | あくせく日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
狼ですな?w
東南アジアからだとどうしても遠いけど、やっぱりお世話になってしまいますなぁ。
一人でやってるとちょっとむなしくなるけど、頑張るしかないね^^;
Posted by ロッソネーロ at 2008年04月28日 22:54
>ロッソちん
 あ、バレた。
 主人公の商談シーンが結構coolだったんで、マネしようとしてシクジリマシタ。
 ま、お互い頑張りましょ(汗
Posted by アクセル at 2008年04月29日 20:10
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